鼠径(そけい)ヘルニアとは?
太腿の付け根の前面がピンポン玉のように盛り上がっている状態を鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)といいます。鼠径部の構造的に弱い部分から、腸などが腹膜を被ったまま脱出してくることが多いのですが、腹腔内の脂肪や卵巣などが脱出していることもあります。ヘルニアの治療には、基本的に外科手術が必要です。
鼠径部ヘルニアの分類
鼠径部のヘルニアは脱出部位(経路)により外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアに分類されます。
1. 外鼠径ヘルニア:鼠径靱帯(そけいじんたい)より頭側で、大腿動脈より外側で脱出。
2. 内鼠径ヘルニア:鼠径靱帯より頭側で、大腿動脈より内側で脱出。
3. 大腿ヘルニア:鼠径靱帯より足側に脱出。
ヘルニア嵌頓(かんとん):初期には押せばすぐに出っ張りは戻りますが、ヘルニアが進行して大きくなると押しても出っ張りが戻らなくなることがあり、これをヘルニア嵌頓といいます。この場合は緊急手術が必要です。
ヘルニアに対する手術
鼠径ヘルニアに対する術式は大きく分けると以下の3通りがあります。
鼠径部前方アプローチ法(従来法):鼠径部前方から鼠径管に到達し、鼠径管内のヘルニア嚢(のう)を剥離して結紮(けっさつ)切離し、鼠径管の後壁をメッシュなどで補強する方法です。局所麻酔、腰椎麻酔、全身麻酔で行われます。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復法:経腹的にアプローチする方法で、腹腔内からヘルニア部の腹膜を剥離して、ヘルニア嚢を結紮切離し、メッシュで固定する方法です。腹膜外からアプローチする方法もあります。全身麻酔で行なわれます。
小児鼠径ヘルニア根治術:小児では腹壁の脆弱性は無いため、ヘルニア嚢の結紮切離のみを行います。全身麻酔で行なわれます。
2024年6月8日 外科 中郡 聡夫
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