外来のご案内

肝・胆・膵外科外来

肝臓、胆嚢、胆管、膵臓の疾患

肝臓、胆嚢、胆管、膵臓(図1)は主に消化の働きをする臓器で、これらの臓器にはさまざまな病気が存在します。

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図1:肝臓、胆嚢、胆管、膵臓のシェーマ

最も多い疾患は、膵臓がん・肝臓がん・胆嚢がん・胆管がんなどの悪性腫瘍と、胆石症・急性胆嚢炎・膵炎などの炎症性疾患です。特に近年は膵臓がんが非常に増えており、ここ数年で膵臓がんの死亡数が胃がんの死亡数を超えることが予想されています。肝・胆・膵外科外来で診察する主な疾患は以下の通りです。


肝臓:肝細胞がん、肝内胆管がん、混合性肝がん、転移性肝がん、良性肝腫瘍、肝内結石症、肝膿瘍
胆嚢・胆管:胆嚢がん、胆管がん、十二指腸乳頭部がん、胆嚢結石症、胆嚢ポリープ、急性胆嚢炎、黄色肉芽種性胆嚢炎、胆嚢腺筋腫症、総胆管結石症、急性胆管炎、先天性胆道拡張症、良性胆道狭窄、原発性硬化性胆管炎、IgG4関連硬化性胆管炎
膵臓:膵臓がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、膵粘液嚢胞腫瘍、その他の良性膵腫瘍、急性膵炎、慢性膵炎、膵石症、自己免疫性膵炎、膵・胆管合流異常症


肝臓、胆嚢、胆管、膵臓疾患の診断

これらの疾患の診断は、主にCT検査・MRI検査・腹部超音波検査などによって行われます。こられは外来での検査です。図2に肝細胞がんの造影CTと摘出標本の肉眼所見を示します。造影CT検査で肝細胞がんが明瞭に白く写っています。

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図2:肝細胞がん(矢印)の造影CT所見と摘出標本の肉眼所見

胆管がんの場合には、胆管や血管の精密な診断のために3次元画像を作成することがあります(図3)。

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図3:胆管(緑)、肝動脈(赤)、門脈(紫)の3次元画像

膵臓がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵神経内分泌腫瘍などの診断では、まず造影CTやMRI検査で診断します。図4は進行した膵頭部がんの造影CT画像ですが、化学療法で縮小した後に膵頭十二指腸切除が可能でした。膵がんの約80%は遠隔転移または上腸間膜動脈浸潤などにより切除不能です。

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図4:膵頭部がんのCT画像と化学療法後の摘出標本の肉眼像

さらに精密検査が必要な場合は、消化器内科において内視鏡的逆行性胆管膵管造影:ERCP(図5)などの内視鏡検査が行われます。ERCP検査には入院が必要です。

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図5:内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

これらの検査結果を、消化器内科と消化器外科の医師によるカンファレンスで検討して治療方針を決定します。

肝臓、胆嚢、胆管、膵臓疾患の外科治療

肝臓がん・胆嚢がん・胆管がん・膵臓がんに対しては、切除可能な場合には外科切除が行われ、切除不可能な場合には主に抗がん剤などによる化学療法が行なわれます。胆石などの炎症性疾患に対しても必要性に応じて外科治療が行なわれますが、内科的治療で治ることもあります。胆石症、急性胆嚢炎については当院の胆石外来に説明がありますので、ここでは肝胆膵の悪性腫瘍に対する外科治療についてご説明いたします。

肝臓がんの外科治療
肝細胞がんでは、3個以下の腫瘍で肝機能が良好な場合に、腫瘍を摘出する肝切除術が行われます(図6)。肝内胆管がんでは、腫瘍が1-2個で遠隔転移を認めず、肝動脈と門脈を完全に取り巻くような浸潤を認めなければ肝切除術が行われます。

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図6:肝臓がんに対する右肝切除術

肝細胞がんの5年生存率は50-70%、肝内胆管がんの5年生存率は30-50%です。
近年肝細胞がんに対する手術は、開腹だけでなく、傷の小さな腹腔鏡手術(図7)およびロボット支援手術も広く行われるようになりました。白井聖仁会病院でも腹腔鏡手術を受けることができます。

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図7:腹腔鏡下手術

胆嚢がん・胆管がんの外科治療
胆嚢がんでは胆嚢摘出術または部分的な肝切除術が行われます。比較的早期の胆嚢がんに対しては開腹手術に加えて腹腔鏡手術もしばしば行われます。
肝門部領域胆管がんに対しては原則として開腹による肝外胆管切除を伴う肝切除術が行われます(図8)。遠位胆管がんと乳頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術(図9)が行われます。
胆嚢がんの5年生存率は40-60%、肝門部領域胆管がんの5年生存率は30-50%、遠位胆管がんと乳頭部がんの5年生存率は40-60%です。

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図8:肝門部胆管がんに対する右肝切除+肝外胆管切除術

膵がんの外科治療
膵頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術(図9)が行われ、膵臓と小腸、胆管と小腸、胃と小腸を吻合して再建します(図10)。膵体尾部がんに対しては膵体尾部切除術(図11)が行われます。最近、膵体尾部切除は、腹腔鏡手術で行うことが多くなっています。

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図9:膵頭十二指腸切除術(膵頭部、十二指腸、胆嚢、総胆管を一括して切除)
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図10:膵頭十二指腸切除後の再建法(白い管はドレーン)
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図11:膵体尾部切除術(膵体尾部と脾臓を一括して切除)

膵臓がんの5年生存率は20-40%ですが、最近ではさらに良い成績も報告されています。


膵臓がん・胆道がん・肝細胞がんの化学療法

膵臓がんと胆道がんでは手術ができない進行がんのことも多く、また切除後に再発することも少なくありません。こうした患者さんに対しては主に抗がん剤による化学療法が行われます。ここでは膵臓がん・胆道がん・肝細胞がんに対して用いる主な化学療法をご説明いたします。
化学療法には、白血球減少、好中球減少、貧血、血小板減少、発熱性好中球減少、下痢、嘔吐、食欲不振、間質性肺炎、肝機能障害、腎機能障害などの有害事象(副作用)がありますので、注意しながら行う必要があります。

膵臓がんに対する化学療法
 全身状態良好の一次治療
ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GnP)療法(70歳以上も可能、主に外来で施行)
フォルフィリノックス(mFOLFIRINOX)療法(主に70歳以下、主に入院で施行)

 全身状態やや不良の一次治療(および二次治療)
ゲムシタビン単剤
S-1単剤
(ゲムシタビン+S-1療法)

● 切除可能膵癌に対する術前化学療法
ゲムシタビン+S-1(GS)療法

胆道がんに対する化学療法
● 全身状態良好の一次治療
ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ(GCD)療法
ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS)療法
ゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法
ゲムシタビン+S-1(GS)療法

● 全身状態やや不良の一次治療(および二次治療)
ゲムシタビン単剤
S-1単剤

● 二次治療
FGFR融合遺伝子陽性、FGFR遺伝子異常胆道がん ペミガチニブ(ペマジール)
FGFR融合遺伝子陽性、FGFR遺伝子異常胆道がん フチガチニブ(リトゴビ)

肝細胞がんに対する化学療法
● 全身状態良好・肝機能良好の一次治療
アテゾリズマブ+ベバシズマブ療法
ソラフェニブ
レンバチニブ
● 全身状態良好・肝機能良好の二次治療
レゴラフェニブ(ソラフェニブ治療後)
ラムシルマブ(ソラフェニブ治療後でAFP400ng/ml以上)
カボザンチニブ(ソラフェニブ治療後)

重粒子線・陽子線治療

肝細胞がんと肝内胆管がんで切除不可能な場合には重粒子線・陽子線治療が保険適応となっています。
また、遠隔転移を認めない切除不能局所進行膵臓がんに対する重粒子線治療も保険適応となっています。肝転移、肺転移、腹膜転移などがある場合は重粒子線治療を受けることはできません。

2024年6月8日 外科 中郡 聡夫
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